遠いザンビアの地で捨てられる運命だったバナナの茎が、日本の伝統的な和紙の技術と出会い、紙となる。環境破壊、密猟、貧困。すべてを解決したいという思いから誕生したのが、このバナナペーパーだ。

2006年、野生動物の雄大な世界を見るためにザンビアを訪れたエクベリペオさん、聡子さん夫妻は、そこで貧困の中で生きる人々の姿を目の当たりにする。サウスルアングア国立公園でガイドをしていたビリー・エンコマさんに彼の住む村も案内してもらうと、家に電気や水道はなく、多くの子どもが学校に通っていなかった。村では現金収入になる仕事が少なく、人々は違法と知りながら森林伐採や密猟をする。ペオさんは、ひとりの父親が密猟で逮捕されるところを見たという。木を切るために森に入り、動物に殺されてしまう女性もいる。「貧困と環境問題、密猟問題は繋がっている」とペオさんは言う。

バナナの茎から水分を抜き繊維を取り出す

翌年、夫妻は村で教育支援を開始したが、雇用の必要性を実感。環境や動物に配慮し、人々が貧困から抜け出すための雇用を作りたい。11年、2人とビリーさんは行動に出た。

バナナは収穫後、茎を根本から切り落とさないと、新しく実をつける次の茎が育たない。3人は、それまで捨てられていた茎を農家から買い取ることに決めた。現地の人々が茎から繊維を取り出し、乾燥させる。それを福井県越前市にある和紙工場に送り、日本の職人が質の高い紙に作り上げる。化学物質の使用が少ない和紙は、柔らかい風合いだが強度に優れる。日本で紙製品を扱う会社の協力を得て、12年、バナナペーパー商品の販売を開始した。

取り出した繊維を乾燥させる。新しい茎は一年で成長するため、普通の木よりも再生が速い。すべてエンフウェ村にて、オーガニックで作られたバナナの茎を使用

村では現在、23人がバナナペーパー工場で働き、茎を買い付ける農家は41軒に増えた。多くの人がこの仕事を得て子どもを学校に行かせられるようになり、マラリア予防の蚊帳を購入できる家も増えた。

世界自然保護基金ジャパンによると、現在地球上では毎年日本の面積の3分の1ほどの森林が失われ、その約4割は紙産業向けだという(注)。自分の使っている紙がどんな森から来るのか、どんな人がどうやって作っているのか。それを知ることは難しい。「私たちのバナナペーパーは環境と社会を豊かにし、顔が見える紙です」とペオさんは言う。(小島亜佳莉/本誌編集部)

商品紹介

名刺、メモパッド、ノート、マスキングテープ、ペーパークラフト、ペン、証書、包装紙など。業務用紙の販売もあり。販売元はそれぞれの製品で異なる(HPに販売元情報あり)。

http://oneplanetcafe.com/paper/sample

お問い合わせ03-5776-6228

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株式会社ワンプラネット・カフェ 2012年設立。バナナペーパー生産のほか、環境やサステナビリティ(持続可能な世の中をつくること)をテーマとしたコンサルティングや講演、海外での視察・研修ツアーなどをおこなう。今年10月には、「世界フェアトレード機関(WFTO)」から認証を受け、バナナペーパーは日本初のフェアトレード認証の紙となった。