シンプルな箱には生産者のイラスト。「She(シー)ソープ」は、石けんはもちろんのこと、パッケージまでフェアトレード。作るのは、バングラデシュとネパールの女性たちだ。
バングラデシュの首都ダッカから北に約120キロ。マイメンシンでは、セックスワーカーとして働かざるを得ない女性が少なくない。とはいえ、そういった女性に対する世間の目は厳しく、家族からさえ見放されることもある。賃金は安く生活は苦しいが、他に生きる道を自力で見つけることは困難だ。

南アジアで40年以上フェアトレード活動を続けてきた「NPO法人シャプラニール=市民による海外協力の会」の職員に7年前、現地のパートナー団体の女性から「元セックスワーカーたちが作った石けんを日本で販売できないか」という相談があった。彼女は、女性たちが、別の仕事をして自立し生活していくため、石けんを作る技術と機会を与える活動をおこなっていた。彼女の熱意が日本での誕生のきっかけとなった。とはいえ日本で求められる「品質」は厳しい。幾度の品質改良を重ね、2年後の2011年、ようやく店頭に並んだ。現在、マイメンシンでは20人以上の女性たちが、この石けんを作っている。

「石けん作りの仕事は、彼女たちにとって単にお金を稼ぐためだけのものではないんです」とシャプラニールのスタッフ、平澤志保さんは言う。工房に通い始めたばかりの女性の中には、うつむき、打ちひしがれている感じの人も少なくない。しかし、働き続けていくにつれ表情も明るくなるという。「人に胸を張れる仕事で生活をしているということで、自信がついたのだと思います」

もうひとつの生産地であるネパールのグリ村は、首都カトマンズから車で約13時間。辺ぴな農村に十分な仕事はなく、多くの男性が、町や海外に出稼ぎに出て行く。男性が病気になったりして十分な稼ぎがなくなれば、家族は貧困に陥る。夫が出稼ぎに行ったまま帰ってこないケースも珍しくない。村では、それぞれ様々な事情を持つ女性たち3人が、石けんを作り、家族を支えている。

Sheソープの原料は、現地の木の実から作られるバター、オイル、ハーブ、蜂蜜などすべてが天然のもの。ひとつひとつが手作りだ。秋のバスタイムに、ぜひ♡(小島亜佳莉/本誌編集部)
Sheソープ バングラデシュ産とネパール産でフェイス、ボディ、ヘア、ベビー用の4種類ずつ。香りはレモングラスやミントなど7種類。箱には現地で手漉きされた紙を使用。1個1107円〜(税込)。箱なしは810円〜。現在は全国150以上の店舗で販売。ネット販売もあり。 http://www.craftlink.jp/
シャプラニール=市民による海外協力の会 1972年に設立された日本の国際協力NGO。ネパールとバングラデシュを中心に活動。「シャプラニール」とはベンガル語で「睡蓮の家」という意味で、睡蓮はバングラデシュの国花でもある。お問い合わせ先03-3202-7863 https://www.shaplaneer.org/