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編集長便り 2006年8月1日

 DAYS JAPAN8月号をごらんいただけましたでしょうか。

 特集は「メディアは戦争をどう伝えたか」です。これは昨年オランダの世界報道写真財団が50周年記念企画として、世界のメディアが掲載した重要な報道写真特集の中から、戦争報告を集めたものです。パリマッチ誌のハンガリー動乱報告からはじまりますが、道路に武装した市民が銃を構え、中央に女性がやはり銃を構えて立つ、という写真です。説明を読むとこの直後にハンガリーの首都ブダペストは旧ソ連軍によって鎮圧されたということです。

 次の見開きはライフ誌のカルチィエ=ブレッソンによる新生中国報告です。彼がこのような取材をしていたとははじめて知りました。そしてベトナム、カンボジア、チェチェン(ナクトウェイ)、パレスチナ(これはDAYS JAPANの報告です)が続きます。

 ライフなど全盛期の雑誌の誌面は、見事に力があふれています。メディアが時代に役割を果たすということがどういうことをさすのか、わかります。同時にメディアとフォトジャーナリズムが、何を守ろうとして、何に敗れたのかも見て取れます。

 ジャーナリズムに興味を持っている人だけでなく、エディトリアル・デザインに興味ある人にも、この特集は非常に役立つと思います。これは現在東京都写真美術館で展示をしていますから、あわせてご覧ください。

 ところで今号は2つの女性に関するテーマを扱っています。ひとつは乳がん患者の報告、もうひとつは性暴力の犠牲者のレポートです。前者の写真を見て勇気付けられたという声も届きました。後者はアメリカとカナダの被害者女性16人の報告です。撮影者は自ら被害者である日本人女性、大藪のぶ子さんです。性被害者の人々の抱え込んだ苦しみの深さを改めて思い知るとともに、カミングアウトして問題を告発することに踏み切った人々の勇気に深い感動を覚えます。大藪さんによると、これらの女性は、顔を現すことによって、過去を乗り越えることができるようになったということです。私自身多くのことを教えられました。女性だけでなく、男性が見るべきページだと思っています。

 ところで長野で女子中学生根橋清香(さやか)さん(13)が、土砂崩れで行方不明になりましたが、彼女は写真を撮るといって現場に出かけたそうです。父親が同行しましたが、彼女だけ土砂に巻き込まれました。

 この事件は昔私が知り合った人の死を思い起こしました。ウタリアン成田という人で、彼は兄さんといっしょに昔のアイヌの丸木舟を、昔ながらの方法で製作し、私は現場を取材したときに知り合ったのです。彼は写真にも興味を持っており、どうしたらいい写真が撮れるかと私に聞きながら、撮影した写真を見せ、そして釧路湿原の撮影に同行し、私の傍らで写真をとり続けていました。それが彼の報道写真への関心にいっそうの火をつけたのかもしれません。

 その2か月後、私は彼の家族から手紙を受け取りました。ウタリアンは北海道を台風が襲ったときに、防波堤で撮影して、そして波にさらわれたとのことでした。

 危険と安全の判断は、経験者でもひんぱんに間違います。しかも状況は刻一刻と変わります。生き残れるのは、冷静な判断や豊富な経験というよりも(それも大事なことなのですが)、運がよかっただけじゃないかと思えることも多いのです。

 しかし分かりきったようなこうした言葉をはくよりも、ウタリアンも女子中学生も、生きていてほしかった、と思います。
広河隆一



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